なつのおと夏の音
2020/2/23 17:22


夏の音。
カランカラン。グラスに氷がぶつかる白い甘い音。
風鈴の音と重なり、縁側で飲むカルピス。

幼い頃、夏はいつもカルピスとナボナがあって、庭の大きな桜の木に止まるセミを追いかけ、裏の井戸で汲み上げた水で冷やしたスイカを頬張る。典型的な夏の風景の記憶。
夏休みは、サッカーの合宿とスイミングの合宿。それ以外は、おばあちゃんのうちに居た。
父方の祖父母の家には、父の兄弟である叔父や叔母がいて、かわるがわる遊んでもらった。

よく絵本も読んでもらった。
日用品がたくさん載ってる絵本。
食べ物の絵本。
おなじみの桃太郎、金太郎、浦島太郎。

少し大きくなってからは
大きな本棚にあった本を片っ端から読んでいた。
朝から晩まで。
本棚の前で座りこんでると、
カランカラン。
おばあちゃんがカルピスを持ってきてくれた。

おばあちゃんが作るカルピスはすごく濃くて、
飲み終わると喉の奥に甘い痰のようなものが残るのが常だった。いつもカルピスはご進物で届く。オレンジ、グレープそして普通のカルピス。栓抜きで開けて、白いプラキャップを付け直す。必ず少しこぼれて、手がベトベトになった。そこにあるのが当たり前な飲み物だった。

中学生になり、
夏休みも部活等でおばあちゃんの所へは行かなくなった頃、世の中にカルピスウォーターという商品がでてきた。飲んでみてその薄さにびっくり。
何コレ味がないじゃん。

その後、濃いカルピス、カルピスソーダ、様々な商品を飲んだけれど、
おばあちゃんのカルピスにかなう濃さのものに出会ったことは無かった。

そういえば、たまに家で母が作るカルピスも限りなく薄かった。

あれは贅沢品だったのか…
飲みたくてお小遣いを握りしめて買いに行き、その値段に驚いて、半値程度のコーラスを買って帰ったほろ苦い思い出と共に、豊かだった夏がよみがえる。

今回は
素直に書いたねー🌟と師匠に褒めて頂き、
『後藤賞』を頂きました。\(^o^)/

相当、今まで、ヒネてましたかねーやはり。😂😆😝

追記:こちらも「24色のエッセイ」収録作品です。書籍では『夏の音』と漢字表記になっています。なんでだろ???その経過に覚えがない。( ;∀;)

ま、いっか。